ひとりプラネタリウム

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zoom RSS 唐突なマスカット

<<   作成日時 : 2006/12/10 19:29   >>

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も〜可愛らしいわね〜、森田忍さん(↑)。この方ってわたしの義理の弟にそっくりなのよ〜!
あ、ごめんなさい。ご挨拶も自己紹介も遅れてしまったわね。わたしのナマエは森田ミナラズ
森田カオラズの妻よ!きょうから「シノバズNOW」を担当するコトになったの。
初めてのコトだしなんだか緊張するわー!だけど精一杯がんばるツモリよ。よろしくね〜!

隠し切れないその口調!とっくにバレてるぞオマエが愛咲ミナルだってコトは!

『えっ?』

ソレに確かココでの森田家ではナマエに『ズ』が付くのって男子に限ったコトじゃなかったのか?
ホントにど〜なってんだよオマエの性別って!


きゃっ!


                       

























































Y医師が鏡のまえでひとり逡巡していた。

『どうかしらあ・・?』

ためつすがめつ。
『う〜ん。薄いって言えば薄いケド、フツーって言えばフツーだし・・。』
思わず溜め息をついた。
頭髪のコトではない。自身の色素に関してだった。

「・・色白で髪が茶色くて色素薄くってさ。好みのタイプだったけど・・、」

先日のMのコトバがココロに懸かってならなかった。どうしても気になるのだ。
『薄いほうが好みなのよね〜きっと。』
何度でも溜め息は漏れる。
そのときとつぜん、Yの脳裏にはA医師のすがたが浮かんできた。
『あ。』
色白で髪が茶色。ヒトミの色もこころもち緑色がかった、若い『イケメン医師』のA。
にわかな不安に見舞われた。
『もしかして、彼ってMのモロタイプ?』

しかし考えても始まらない。ただひとつの材料から導き出される、当てにもならない結論に踊らされるなど
つまらない。
『ひとりカンファ』にピリオドを打つべく、Yは胸元から櫛を取り出して髪をけずっていた。
まるでさいしょから頭髪を整えるためにその場に立っていたかのように。

『こんや辺り訪ねてきてもおかしくないんだケド、ね・・。』
ふとそう思ったまさにその時、ドアにノックがあった。

ホント〜?!

ドアを開けると、やはりそこにはMが立っていた。

「ブレイクしよ!」
「どうぞ。」

Mはこのところ長めの髪を後ろでひとつにくくっていた。両耳の脇から無造作に零れる毛束さえ、
Yにはなにか悩ましい。
「キミの髪、伸びたみたいだね。」
「うん。それに、冬場の院内って夏よりも暑くない?」
「ああそうだね。けっこう立ちシゴトだしね〜ボクたち。」
おかしなコトを言っている。
「あはは先生もお疲れ〜? ・・ハイ、うんと甘いコーヒー!」
コーヒーを受け取って、気恥ずかしさからYがすぐさま話題を変えた。
「ところでゆうべはタイヘンだったんだって?」
「ああ。一時はどうなるコトかと思ったよ。オペナースもなかなか集まらなくってさ。・・ま、
なんとかなったけどね。」
ソファーの背もたれに半分カラダを預けていたMが、ふいに観葉植物に近づいた。
「げんきそう。ちゃんと世話してあげてるんだね。あたらしい葉っぱも大きくなってきたみたいだし。
・・よかった。」
Yも傍らに歩み寄っていた。
「毎日水あげてるよ。天気のいい日は窓辺に置いてるしさ。生き物にはまめに手をかけてあげなきゃ
ダメってコトだね。
ボクたちにも必要だと思うよ〜、こう、潤いとかさ(笑)。」
Mも苦笑した。
「うん。あっと言う間だよね。12月も中旬だよ?なんかハナシには出てたけどさ、
こんなかんじじゃムリっぽいよね忘年会とか。結局有志でってコトみたいだね。Aからメール来てたけど、
まだ返事もできてないよ。予定立たないしさ。」
A!
Yがすかさず反応した。
「いやA先生。」
「そう、放射線科の。」
「しってるよ、色白で髪が茶色くてなんか・・、その色素薄いような・・。」
「そうそう。」
敵陣に攻め入るような心境で、Yが思い切って問いかけた。
「仲いいワケ?キミたち。」
「うん、すごく。」
すごく?
「大学いっしょだったし、ボクたち同期だし。ずっとつるんで遊んでたんだ。Aってさ、あココでは失礼だね、
A先生てさ、アレでけっこう男っぽいんだ。趣味が山登りなんだよ?・・見えないでしょ?」
打ちのめされた気分のYがチカラなく答えた。
「ああ、そうだね。・・ずいぶん男っぽいんだね。」
からかうように、Mが笑いながらYの眼を覗き込んだ。
「あ〜れ〜?もしかしてタイプなのかな?A先生が(笑)!・・あそうだ。先生も来る?
予定さえ合ったらいっしょにオイスターバーに行くコトになってるんだけど、先生もどお?」
ちがうってば。Yは混乱した。
「こ、好み?・・オイスターバー? えと、いったい誰の好み?」
またしてもおかしなコトを言っている。
Mは声に出して笑った。
「あはは!照れなくていいよ。3人で飲も? ・・ね?」

「あ?・・ああ。」
もはや抗えないなりゆきとなってしまったようだ。
マグに残ったコーヒーを飲み干し、なにか言おうとMの顔を見た。

いつの間にか、Mは真顔になっている。
ゆっくりとYに近づきながら呟いた。
「ねえ先生、先生きょうはホントにお疲れみたい。甘いコーヒーだけじゃ足りないね・・。」

Yの顎を人差し指ですっと引き寄せ、あたらしい香りの唇で、もう一方の戸惑う唇を瞬く間に奪った。
それは短い、風のようなくちづけだった。

「こんどはマスカットにしたの。・・甘すぎるかな?」

い〜えちっとも!

たったひとつのちいさいキスが、Yのもやもやを一瞬にしてかき消していた。


「じゃ、詳細はまたこんど!・・楽しみにしてるね。」
「う、うん。楽しみにしてる〜!」



しなやかに立ち去ったMの残り香漂うなか、
Yのココロにはやがてすこしずつさみしさが滲んできた。

仮にA医師が自分の好みだったとしても、つゆほどのジェラシーさえかんじないであろうM。
そのコトがなんともやりきれなくもあった。しかし・・。

『いったいどんなオトコ(オンナ?)なら、彼を独占できるんだろうね。
独占したいと思わせるんだろうね・・。』

もしかしたら、そんな人間などこの世にひとりすら実在しないのカモしれない、
そう思って自らをとりなした。



Yの落としたとりわけ大きな溜め息で、
観葉植物の葉はしばらくのあいだ、やるせなく小刻みに揺れ続けていた。












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